カッコウの托卵
野鳥図鑑を見ていたら、日本にやってくるカッコウ科の主な4種、
カッコウ、ホトトギス、ツツドリ、ジュウイチのそれぞれの托卵相手が違う事に気がついて
托卵という自然の摂理が気になって調べてみた。
聞いた事がある人がほとんどだとは思うけれど、カッコウは托卵する。
托卵というのは自分で巣をもって子育てせず、他の鳥(魚類や昆虫類でも見られる)に育ててもらう事。
カッコウ科の鳥は他の鳥の巣に一個だけ自分の卵を産み、もともとあった卵のうちの一個を持ち去る(すり替え)
巣の持ち主の鳥は気がつかずに卵を温め続け、カッコウの卵は短期間で孵化するので
巣の持ち主の卵より先に孵化する。
生まれたばかりのカッコウのヒナはまだ目もあいていないのに、背中にあるくぼみに
巣の持ち主の卵を乗せ、巣の外に放り出す。
自分一羽になったカッコウのヒナは托卵相手の親鳥の愛情をいっしんに受け、せっせと餌を運んでもらう。
カッコウ科の鳥の托卵相手は大抵小鳥なので親鳥よりもカッコウのヒナの方が全然大きい。
(オオヨシキリ18cm、カッコウ32cm)
なぜこのカッコウ科の鳥が托卵をするようになったかというと、
体温が関係しているらしい。
他の鳥は気温に関わらず高温を保ちつづけているのに対して、
カッコウは鳥の先祖である爬虫類の変温体質をいまだに残していて、体温が低く、
気温で変動も激しく、卵を温める能力に乏しいため他の鳥に温めてもらう道を選んだらしい。
そして不思議だなーと思ったのがカッコウ科のそれぞれの種類が
托卵する相手となる鳥が違う事。
カッコウ:モズ・オオヨシキリ・ノビタキ・オナガ
ホトトギス:ウグイス・ホオジロ
ツツドリ:センダイムシクイ・ビンズイ・キクイタダキ・アオジ
ジュウイチ:コルリ・オオルリ・コマドリ・ルリビタキ
同じ鳥にばかり托卵すると托卵する相手の種が途絶えてしまう可能性が高いし
そうなるとカッコウ科の鳥達も困ってしまうからかもしれないですね。
そしてこの托卵される相手の鳥達もやすやすと托卵されているわけではないようです。
カッコウ達はばれないように托卵相手となる鳥の卵に近い大きさ、模様の卵を産むわけですが、
他の鳥達もだんだんとそれが見破れるようになってきます。
巣からカッコウの卵だけ落としたり、カッコウが近づくと攻撃したり。
昔の文献からカッコウはホウジロに托卵をしていたようですが、ホウジロはかなり高い確率でカッコウの卵を見破れるようになったようです。
そしてここ数十年でカッコウが托卵相手に選んだのはオナガ。
最初はだまされていたオナガですが、現在では托卵に気がつき、カッコウへの攻撃性も獲得、卵も見破れるようになってきているようです。
オナガはカラス科の鳥で頭がいいですからね。
そして最近の研究でわかってきたことは、カッコウは乱婚で(鳥によっては一夫一婦だったり一夫多妻だったりする)
托卵する相手を選ぶ遺伝子はメスにあるという事。
メスは托卵する相手の卵に似せた卵を産まなければならないかららしい。
そしてそのメスが托卵する相手は自分を育ててくれた仮親と同じ鳥であることがまた不思議だ。
オオヨシキリに育てられたオスと、モズに育てられたメスが出会って交尾した場合、
メスは仮親と同じモズに托卵する。そしてそれは一生変わらない。
この話を夫としていたら、彼がある仮説をたてた。
「カッコウは間引きの役割をはたしているのでは?」
なるほど。托卵相手は大抵複数の卵を産む鳥で、カッコウは一個だけ。
ある種類の鳥が増えすぎないようにバランスを取る役割なのかもしれない。
なかなか面白い考えだと思った。
あと「カッコーの巣の上で(One Flew Over the Cuckoo's Nest)」というアメリカ映画がありますが
カッコーは托卵するので巣は持たないはず。どういうこと?と調べたら
英語の"One Flew Over the Cuckoo's Nest"はマザーグースの早口言葉から来ていて
Cuckooは英語でクークー、このクークーは「気違い」という意味があるそうです。
精神病院を描いた映画なのでCuckoo's Nest=気違いの巣、精神病院という事。
One Flew Over the Cuckoo's Nest=気違いの巣から飛び立った一人
という訳です。
気違い扱いされたカッコー。かわいそうだなぁ。
*ご指摘があってアメリカのカッコウは巣を作る種類がいるとか。
カッコウは夏鳥なので日本には夏になるとやってきます。
今まで鳴き声は聞いた事があるものの見た事がないので今年は是非みたいなぁ。
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コメント
まじまじと読んでました。”かっこう、かっこう、静かに〜♬”って歌なかった?さておき、トリにとりつかれてるね、このブログ(ギャグです)
投稿: Sachiko | 2012年2月 8日 (水) 14時16分
>Sachikoさん
確かにとりつかれてるかも・・(笑)
最近本もね、鳥の雑学とか生態に関するものばっかり読んでるし
投稿: cherie | 2012年2月 8日 (水) 18時14分
アメリカのカッコウの仲間には、自分の巣を持つものが普通にいます。巣を持たないのは日本などユーラシアのカッコウです。
投稿: カッコウ | 2013年6月21日 (金) 06時47分
>カッコウさま
ご指摘ありがとうございます。
そうなんですね!アメリカのカッコウは子育てするんですね〜
投稿: cherie | 2013年6月21日 (金) 22時43分