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2017年9月11日 (月)

息もできない

韓国映画は以前から好きで結構数を見ているほう。
韓国ノワールといわれるバイオレンス・サスペンス系は特に好きで気になる作品は大抵見ていて
ラブロマンスやヒューマン系も評判良さそうだったり好きな俳優が出ているものは見ていました。

「息もできない」は韓国映画の中でも割と有名だと思うし
国際映画祭で受賞している作品なので勿論知っていて
評判も良さそうだったけど、何となく今まで見る気が起きず未鑑賞でした。
タイトルと、キャッチコピーの感じで何となく恋愛ものなのかな?って気がしていて。

この間、韓国ドラマの「大丈夫、愛だ」を見ました。
このドラマはラブコメディでもあるんですが、主人公含めキャラクターの多くが心に病を抱えた人たちの話で
(精神科医であるヒロイン自体が不安障害だったり)
その中でカギとなる人物の役だった、ヒーローの兄ジュボム役だったのがヤン・イクチュン。
この兄は養父殺しで服役していて暴力的な役柄。
ジュボムはやたら存在感があって、ドラマを見ているとき
「なんかこの人ドラマというより映画っぽい感じの役者だなぁ」って印象だったんです。
どっかで見た事ある顔だな?と調べたら「息もできない」の主演でした。

「息もできない」はそのヤン・イクチュンが監督・主演・脚本・編集・制作までしている映画。
主演俳優とだけ思っていたので驚きました。
途中予算が足りなくなって自宅を売ってまで作った映画だとか。
ヤン・イクチュンはもともと俳優で、この作品が監督デビュー作。

あらすじとしては
借金の取り立て屋をしているチンピラのサンフン(ヤン・イクチュン)は
少年の頃、家庭内暴力の末に父親が母親と妹を殺してしまい、父親に怒りと憎しみを抱きながら生きている。
常に暴力的で誰彼かまわず暴力を振るうような男だが、甥に対しては優しい一面をもっていたり。
偶然出会った女子高生のヨニ(キム・コッピ)もまたベトナム戦争後精神を病んでいる父親がいて
母親も死んでいて、弟も高校にもいかず荒れた生活で暴力的。
恵まれない環境の中で出会った二人。

感想としては

いや~すごい映画でした。今まで見ないで勿体なかった。
なんていうか悲しくて痛くて、切ない。
途中から号泣で、最後のスタッフロールが終わっても嗚咽がとまらなかった。

何となく見るまでは恋愛映画なんだ思っていたけど、恋愛要素もなくはないけど
これはもう「人間」の関係を描いているからなんだろう、ジャンルとしてはヒューマン?
でも所謂ハートウォーミングなヒューマンではない・・
バイオレンス映画でもあるけど、バイオレンスなだけじゃない・・
ジャンル分けの難しい映画です。

サンフンが憎んで、死んでほしいと言っていた父親が自殺未遂を起こし
ヨニは精神を病んだ父親が包丁を自分に向けてきたので家を飛び出し
漢江の川原で何も事情を話すわけでもなく2人で泣くシーン。
ヨニはこの時も、最後も泣くときに声を押し殺して泣く。
この声を押し殺して泣く様子がすごくリアルだった。

暴力の連鎖で悲しい結末を迎えてしまう話だけど
サンフンの友達だったり姉だったりまともな人たちもいて
その中でヨニも弟の事、サンフンの過去を乗り越えて生きていってほしいと節に願ってしまう。
映画の中の話なのに。

ヤン・イクチュン監督、すごいです。
家庭内暴力という自分自身の経験をもとに書かれた脚本で、もうこの映画で出し切ったとの事で
しばらく長編映画を撮る予定はないそうです。

この映画の原題は「똥파리トンパリ」
糞蠅を意味する罵倒語だそうです。

魂に刺さる、久しぶりにそんな映画を見た気がします。





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