ミセン
これまた韓国ドラマのレビューなんですが、
このドラマもすごく良くて語れるなぁと思ったので書きます。
ミセンー未生 미생 2014年 tvN制作
このドラマは韓国ドラマのお馴染みの記憶喪失とか出生の秘密とかそういう要素は全くなく
一流商社で働くことになった若き主人公と、上司や同僚など会社で働く人々を描いた群像劇。
もともとは韓国サラリーマンのバイブルと言われてるWEB漫画が原作。
ストーリーは
幼いころから囲碁の才能があり将来を期待されプロ棋士を目指していたチャン・グレ。
しかしプロになる試験の時期に父親が病気で亡くなり、家計を支える為にもアルバイトをしなくてはならなかったりで囲碁に集中できず、結局プロになる年齢制限を越してしまい挫折する。
プロ棋士になる事しか将来を考えていなかったので高校も行っていないし高卒認定の資格を持ってるだけ。
社会人経験もなく日々アルバイトをしている26歳。
心配した母親がツテで知り合いの社長さんから商社のインターンの仕事を紹介してもらう。
商社のワン・インターナショナルは一流商社で、社員は大卒、英語は必須、第三外国語もあたりまえ。
そんな中で学歴もない、社会人経験もない、外国語スキルもない、ないないだらけのチャン・グレ。
周囲にはコネ入社と言われ、学歴のなさや語学力のなさを馬鹿にされることもありながら
囲碁で培った先を読む力や場を読む力、記憶力、勝負強さを駆使しながら奮闘する。
このチャン・グレの物語だけ聞くと、何にも出来なかった元天才棋士の青年が
たまたま入った一流企業で活躍するよくあるサクセスストーリーになるような気がしますが、
このドラマの良いところはそういう面が一切なく、失敗したり葛藤したり
社会の中でうまくいかない、もどかしい思いを抱える様子が非常にリアルに丁寧に描かれている事。
物語はチャン・グレだけのものではなく、
もう1人の主人公とも言えるグレの直属の上司であるオ・サンシクの組織の中で会社員として、上司として生きていく中の葛藤だったり
同期入社の新人達の上司からのパワハラに苦労する中で生まれる友情や
女性社員たちは男性上司からセクハラを受けたり、働く母親の苦労など
登場人物のひとりひとりの背景や物語がしっかり描かれています。
タイトルのミセン(未生)とは、韓国の囲碁用語でまだ弱い石で、死んでもいない、生きてもいない不確かな石という意味らしいです。
登場人物
<営業3課>
チャン・グレ(イム・シワン)
元天才囲碁棋士。学歴なし・社会人経験なしの主人公。
グレは高校をやめる時も先生が止めに来た位もともと頭が良いんだよね。
棋士って将棋やチェスもそうだけどIQの高い人が多いみたいだし。
でもグレは自分が棋士だったことは周りには自分からは誰にも言わない。
唯一「お前の事が知りたいんだ」って言ってくれた先輩のキム代理だけには家に招待して自分の過去を話す。
一番尊敬しているオ課長にも自分からは話した事はないんだけど。
囲碁という1人の真剣勝負の中だけで生きてきたグレは友達もいないし周囲との関わり方がわからない
そんな中で社内で自分ができる事を必死でやって段々周りに認めて貰えるようになる。
静かでひたすら我慢する修行僧(ドラマの中では長期服役囚の出所後って言われてたけど)のよう。
演じるイム・シワン君ですが「太陽を抱く月」(ドラマは途中で挫折)で見た時に綺麗な顔した子だな~って思ってました。
韓国男子俳優(シワン君はもともとアイドルだけど)の中では珍しく小柄。
公称より多分もっと小さくて160cm台なんじゃないかな。
でもこのグレという役柄には小柄なシワン君でぴったりだった気がする。
オ・サンシク課長(イ・ソンミン)
チャン・グレの直属の上司。当初課長でのちに次長に昇進。
ワーカーホリックな仕事人間で不正が嫌いで部下思いだけど、3人の子持ちで家族想いでもある。
社内では過去のしがらみから専務や派閥と対立している。ロシア語が堪能。
オ課長は理想的な上司ですよねぇ。仕事もできるし明るく冗談好きで部下思い。
でも出世街道からはちょっと外れたところにいるので、出世したい部下からはできない上司呼ばわりされたり。
でも3課の部下達からは猛烈に信頼されているし、同期のソン次長やコ課長には互いに心配しあったり。
グレの同期達の新人にも課が違っても積極的に声をかけて、さりげなく心配したり。
演じるイ・ソンミンさんは映画「さまよう刃」の刑事役で見た事のある俳優さんでした。
もうこの方以外オ課長は考えられないほどオ課長でした。
キム・ドンシク代理(キム・デミョン)
チャン・グレの直属の先輩。天パでぽっちゃり。
見た目も性格も優しいけど仕事はできる。日本語・中国語が堪能。
このね、キム代理大好きなキャラクターです。女性にはモテないけど面倒見がいいし優しい。
もともとは同期の駐在が決まった時羨ましがったりそれなりに上昇志向もあったけど
結局、オ次長もグレも会社から去ってしまい、残ってしまったキム代理は
「仕事がおもしろくない・・・」と呟いて、呼ばれてないのにオ次長の新しい会社におしかけ
「僕の席はどこですか!?」って来ちゃう。
オ次長とグレとキム代理で3人でぴょんぴょん輪になって喜んでて嬉しかった~
<グレの同期>
アン・ヨンイ(カン・ソラ)
同期の中では紅一点。資源2課。ロシア語が堪能。
インターン時代から大型の契約をとったり、仕事のできる女子。
でもそのできるがゆえに配属された資源課では先輩の男性社員達から
パワハラ、セクハラ的な扱いを受けて苦労する。でもそれに耐えて段々信頼を得ていく。
ヨンイは早い段階からグレの事を認めているんですよね。頭がよく勘もいい。
バリバリ仕事のできる女子だけど、家庭環境が複雑で元軍人で男尊女卑の父親からお金をたかられてる。
もうほんとヨンイの親は毒親。完全に機能不全家族でヨンイはACだなぁ・・
演じるカン・ソラちゃんは映画「サニー」でチュナ役だった子だ!
はっきりしたお顔の美人さんですよね。
ミセンには「サニー」に出てた役者さんが意外に出てる。
専務役のイ・ギョンヨンさんだったり(サニーだと現在のジュノ役)
オ課長の後任のキム・ウォネさんだったり(サニーだと先生。この方結構色んなドラマでちょいちょい見かけるけどいつも印象に残る)
ーーーハ代理(ヨンイの指導役)
関口知宏を彷彿とさせる眉毛が太い先輩。すごい女性を下に見ているタイプで最初むかつきました。
最終的にいい人になるわけじゃないけど、ヨンイに対してだんだんまともになってきてよかった。
チャン・ベッキ(カン・ハヌル)
ずっとエリート街道まっしぐらできた、そつのない男子。鉄鋼1課。ドイツ語が堪能。
ベッキは自分に自信があるんだけど、なかなか仕事を任せてもらえなくてもやもや。
学歴もないグレの方が積極的に仕事に関わらせて貰えて、社長にも褒められて
3課の上司たちとも楽しそうに飲みに行ってて、どんどん羨ましくなっちゃって嫉妬する。
でも基本的に育ちがいいのでインターン時代から他のみんなのようにグレに意地悪したりしないし
だんだんとグレの事を認めて助けるようになってく。
ベッキはヨンイの事が好きなんですよね。靴をプレゼントしようとする時とか
「頑張れ、ベッキ!」とつい応援しちゃいました。器用そうに見えて不器用なベッキ。
ベッキだけが、ヨンイの家庭の事情とか、偶然知ったグレの棋士時代の過去とか知ってる。
でもそういう自分が知り得た情報を他の誰かに話したりもしない。
ーーーカン代理(ベッキの指導役)
カン代理、最初はベッキに仕事させないし冷たそうでなんだよ、この上司。と思ってたけど
オ課長が誉めていた通り至極まともで良い先輩でした。
ハン・ソンニュル(ピョン・ヨハン)
ブルーカラーの家庭出身の現場第一主義。繊維1課。中国語が堪能。
お喋りで情報収集に余念がないムードメーカー。あだ名は壁犬。
インターンの早い段階からグレとは喧嘩したりもして打ち解ける。
ソンニュルは上司に恵まれなくて、何度も告発しようとして失敗して逆に自分の立場が悪くなって
一時期明るいソンニュルじゃなっちゃう時も。
なんか彼は顔がすごく似てるってわけでもないと思うんだけど、ユン・サンヒョンさんに似てません?
髪型のせいかもしれないけど、なんだろ雰囲気かな?
ピョン・ヨハンくん、今公開されてる映画「あなた、そこにいてくれますか」で見てたはずなのに全然気がつかなかった(゚o゚;;
彼も良い役者さんなんでしょうね。
ーーーソン代理(ソンニュルの指導役)
ソン代理、最初はいい人かな?なんて思ってたけどとんでもない奴でしたね。
仕事は押し付けるわ、手柄は横取りするわ。
最後、取引先の女性社員と不倫してる事がばれて、ぼこぼこにされてたけどざまーみろ、と思いました。
ソン代理もムカついたけど、あのセクハラ・パワハラ常習の資源課のマ部長が一番嫌い!!
マ部長になにも制裁がなかったのがすっきりしなかった。
物語は途中までは囲碁の経験からグレが機転を利かせて社内でうまく立ち回る様子だったり
見せ場的なところもあるんですが、終盤になってくると同期の中でも一人だけ正社員でなく
2年の契約社員であるグレの契約満期が近づいてきて、その中でオ課長がなんとかグレを残そうと
専務から直々にきた仕事でトラブルになったり、雲行きがあやしくなってくる。
私も途中までは見ていて泣いたりしていなかったんだけど、
14話の最後オ次長とソン次長が屋上で、オ次長はグレに正社員への期待を持たせる事ができないと言い
ソン次長はそれでも可能性はないわけじゃない、と話すシーン。
グレに対してなんとかしてやりたい、でも出来そうにないもどかしい思いが交錯してホロリときました。
その後も終盤はホロリときたシーンが多かったな。
レビューを見てもこのドラマは1話あたりが80分くらいと長めだし、終盤はちょっとみるのがきつくなってきたっていう声もあったんだけど
私は終盤のちょっと長くて暗い展開も嫌いじゃなかった。
皆がそれぞれ自分自身も色々な悩みを抱える中でも仲間の事を思いやって気遣って奮闘する姿。
それこそ、グレがオ課長に言ってもらって何度も反芻する「ウリ」という言葉の意味なんだと思う。
「ウリ」は韓国語で「私達」という言葉だけど、このウリという言葉は日本人が感じる私達という言葉より
もうちょっと文化的に違う概念らしいんですよね。
鷺沢萠さんの本でもよく書かれていたな。ウリマル、とかね。
倒れたソ次長のかわりにオ次長と新人達が休日ホテルで皆で仕事するエピソードとか好きだなぁ。
同期とかそういう関係がちょっとうらやましくなる。
このドラマははっきりとしたラブストーリーはありません。
でもベッキがヨンイを好きな事は容易にわかる。
ヨンイはグレに好意はあるけど異性としての好きとはちょっと違う感じ。
その辺の流れも自然で良いなぁと思う。
私はこんな大企業で働いた事もないけど、会社内で起こる色んな出来事が
どこの国でも変わらない(とくに日本と韓国はやはり近い文化だと思うし)んだなぁと。
女性蔑視だったり、仕事を押し付けられたり、正当に評価してもらえなかったり。
私も仕事帰りに悔しくて泣いて帰った事とかあったな。。
世の中の旦那さん、お父さん達もそんな中で付き合いで飲みたくないお酒を飲んだり
上司の嫌味に歯を食いしばったり、みんな我慢してるんだよね。
このドラマ、続編もあるなんて言われてるけどやるのかな。
シワン君がいま兵役に行ってるのでやるとしても先でしょうね。
今度はオ次長の会社は中小企業だからそこでの奮闘記かな。
また長々と書いてしまったけど、最近自分の好みは群像劇なのかな、と気がついた。
韓国ドラマだとベタなラブストーリーも好きだけど応答せよシリーズのような群像劇も好き。
そもそも昔からMy favoriteなドラマ、SEX AND THE CITYも群像劇と言えるし。
それぞれの人々に人生を感じるドラマが好きかな。
あと恋愛だけでなく友情を感じられる話が好きなのかも。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント